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<改正育児介護休業法>介護に関する改正点と4月までにやるべきこと

 育児介護休業法が改正され、育児・介護の分野で段階的に施行されます。まずは2025年の4月から、続いて10月から施行されます。
 今回の改正では、「介護」に関して事前に準備が必要な大きな改正点があります。従業員の介護離職は、企業にとって貴重な人材の損失であり、事業継続における大きな課題となっています。ここでは、2025年4月から施行される介護に関する改正点にしぼって解説していきます。

①個別周知・意向確認の義務化

 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出たときは、介護休業など社内の両立支援制度等について個別に知らせるとともに、制度を利用する意向があるかどうかを確認することが企業に義務付けられます。
 この個別周知・意向確認は、出産や育児について、すでに 2022年から義務化されているものと同じです。同様の措置を、介護の場合にも義務化することになりました。労働者に周知すべき内容は次のとおりです。

■利用できる制度や措置について
 ⇒介護休業/介護休暇/所定外労働の制限/時間外労働の制限/深夜業の制限/時短勤務などの措置
■制度利用の申出先
■介護休業給付金に関すること

 個別周知や意向確認の方法は、面談、または書面交付とされています。労働者が希望した場合はFAXや電子メール等でもかまいません。意向を確認する際は、「君は利用しないよね?」とたずねるなど制度の利用を控えさせるような形での実施は認められません。4月1日までに個別周知や意向確認のための文書を準備しておく必要があります。厚生労働省が公開している個別周知・意向確認書の記載例を活用しても良いでしょう。

②早い段階での情報提供の義務化

 介護に直面する前の早い段階で、両立支援制度について労働者に情報提供することが義務づけられます。これは、出産や育児の場合には無かった、介護独自の新しい制度です。介護に直面しても会社に相談できず一人で抱え込み、仕事との両立が困難になって退職してしまう人も多いそうです。まだ介護に直面していない段階から、会社にはさまざまな両立支援制度があり、いざとなればこうした制度を利用できることをアナウンスしておくことは、介護離職を防止する上で非常に有効でしょう。
 「介護に直面する前の早い段階」で情報提供するということですが、それは具体的にいつなのでしょうか。これは、労働者が40歳に達したときです。具体的には以下のいずれかの期間に情報提供すべきと浚えています。

■40歳に達した日の属する年度の初日から末日までの期間
■40歳に達した日の翌日から起算して1年間

 社内でタイミングを泱めておいて、毎年同じ時期に年齢要件に該当する社員に情報提供をおこなうなど、忘れずに実施できる方法を検討しましょう。40歳というと介護保険料の徴収が始まる時期ですから、その通知とあわせて情報提供するのも1つの方法です。周知の方法は、面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかとされています。①の個別周知とはちがって、メールは希望者の場合のみとはなっていないので、対象者に一斉にメール送信してもよいでしょう。情報提供すべき内容は①の個別周知と同じです。ただし、指針では「介護保険制度についてもあわせて周知することが望ましい」とされています。こちらについても厚生労働省の記載例を活用するとよいでしょう

③制度を利用しやすい雇用環境整備の義務化

 両立支援制度を利用しやすい職場環境を整備し、制度利用の申出が円滑におこなわれるようにするため、次の措置のうちいずれかを講じることが義務付けられます。

■両立支援制度にかかる研修の実施
■相談体制の整備(相談窓口の設置)
■両立支援制度の利用事例の収集・提供
■両立支援制度や制度の利用促進に関する方針の周知

 1つでも実施すれぱ義務を果たしたことになりますが、できる限り複数の措置をおこなうことが望ましいとされています。これも、育児についてすでに義務付けられているものと同様ですから、育児について実施している措置に、介護に関する内容もプラスするという運用でもよいでしょう。

④介護休暇の対象者を拡大

 介護休暇は、要介護状態にある対象家族円介護や世話のために年に5日を上限に取得できる休暇です。1日単位や時間単位で取得できるため、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせなどに利用しやすい制度です。現行法では、労使協定で次の労働者を介護休暇の対象から除外できることになっています。

A.勤続6か月未満
B.所定労働日数が週2日以下

 改正後はこのうち Aを撤廃し、労使協定で除外できるのはBのみとなります。4月1日までに労使協定を変更して締結し直しておく必要があります。就業規則(育児介護休業規程)にも同様の除外規定を記載している場合は、そちらもあわせて改定し、届け出ておきましょう。

⑤介護期の在宅勤務を努力義務に

 要介護状態にある対象家族を介護する労働者が希望したときは、在宅勤務(テレワーク)を選択できるよう、企業に努力義務が課せられることになりました。
 努力義務であり義務ではないため、必ずしも対応しなけれぱならないわけではありませんが、在宅勤務の導入が可能な企業は、介護離職を防止するために導入を検討してはいかがでしょうか。完全在宅勤務ではなく週に1~2回の在宅勤務が可能になるだけでも、仕事と介護を両立する労働者にとっては大きな助けとなるはずです。
 導入する場合は就業規則の改定もあわせてチェックしておきましょう。

4月1日までにやるべきこと

 介護関係の改正点について、施行日である 2025年4月1日までに準備しておくことは下表のとおりです。周知や情報提供の文書を作成するほか、就業規則や育児介護休業規程を改定し、届け出ておく必要があります。

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 親の介護を理由に社員が退職してしまったという経験がある企業も少なくないことでしょう。現状、介護による退職者や介護休業の取得者はいなくても、会社に相談できないまま家族の介護をしている社員がいるかもしれません。
 法律で義務付けられたから表面的に最低限度のことをやっておくというのではなく、介護離職を防止するために必要なことは何か、両立の助けとなるものは何かを考えて、有効な施策を実施することが大切です。
 家族を介護する社員への支援体制を整える会社は、介護をしていない社員にとっても働きゃすい環境が整うため、誰もが安心して働ける職場となるのです。

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