準備は何から?「労働保険の年度更新」<その1>
毎月6月から労働保険料の申告・納付手続きがスタートします(労働保険事務組合に委託している場合は、その事務組合の日程によります)。この手続きを「年度更新」といい、前年の4月から今年の3月までの賃金総額をもとに労働保険料を計算します。そろそろ賃金の集計作業など準備を始めましょう。
労働保険の「年度更新」とは
まず、労働保険の年度更新とは何かを簡単に確認しましょう。労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。労災保険では、業務上または通勤途中のケガや病気などに、雇用保険では、失業したときや、在職中に育児・介護休業を取得するときなどに給付が受けられます。 この2つの制度の保険料は、労働者に支払った賃金総額をもとに算出されるため、年に一度、賃金を集計し、保険料の申告と納付をおこなう手続きをします。これを年度更新といいます。年度更新では、前年度の保険料の確定精算と、今年度の保険料の仮払いを同時におこないます。つまり今年は、令和5年4月から令和6年3月までの保険料を確定精算し(「確定保険料」といいます)、令和6年4月から令和7年3月までの保険料を仮払い(「概算保険料」といいます)します。
前年度の確定保険料は前年度の賃金総額(※1)をもとに、今年度の概算保険料は今年度の賃金総額の見込み額をもとに算出します。事業を急激に拡大して人員を大幅に増やす予定があるなど大きな変動(賃金総額の見込額が1/2未満または2倍超)がある場合でなければ、「今年度の賃金総額の見込み額=前年度の賃金総額」とします。実務的には、今年度の賃金総額の見込額は、前年度の賃金総額を使用することがほとんどです。
昨年仮払いした概算保険料の額が今年度の確定保険料額に対して不足していた場合は、今年度の概算保険料額に対して不足分を加算して納付します。逆に、多く払いすぎていた場合には、今年の概算保険料に払いすぎた額が充当され、残りの額だけを納付します。
申告・納付は7/10まで
年度更新の申告・納付期間は6月1日から7月10日までとなります(口座振替を申し込んでいるときは第1期の納付が9月6日。労働保険事務組合に委託している場合は、その事務組合の日程によります)。
保険料は3回に分けて納付することもできます(「延納」といいます)。ただし、延納できるのは概算保険料が40万以上(二元適用事業所など労災保険か雇用保険のどちらか一方のみの場合は20万円以上)の場合または労働保険事務組合に事務処理を委託している場合に限られます。
※1 建設業などで賃金総額が正確に算出できない場合は「賃金総額」の代わりに、「請負金額×事業の種類ごとに定められた労務費率」を使用して保険料を算出することができます。