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事業主は労災認定に不服申し立てできず/最高裁が初判断

 最高裁第1小法廷は7月4日、従業員の労災認定に不服のある事業主が国に認定の取り消しを求めることは出来ないとする初の判断を示しました。一定規模以上の事業所については、労災の発生状況に応じて保険料率が増減する「メリット制」という仕組みが適用されます。今回の訴訟の原告となった事業所も対象で、従業員の労災認定によって保険料負担が重くなることから、国に認定の取り消しを求めて提訴したものです。

 労災保険法では、労災認定に不服がある場合、労働者のみが審査請求や訴訟を起こせると定められています。事業主の不服申し立てによって労災認定がくつがえった場合、労働者は受け取った労災給付の返還を求められることになり不安定な立場に立たされるからです。

 最高裁では、裁判官5人全員一致の結論として「事業主からの不服申し立ては出来ない」という判断を示しました。そのうえで、事業主が不服申し立てをおこなう場合は「労災認定」に対してではなく、その後の「保険料引き上げ」に対しておこなうべきだとしました。申し立てによって保険料引き上げが取り消された場合でも労働者の労災認定には影響しないとの見方を示しています。
 なお、国は2023年から、事業主側が労災保険料の決定に不服を申し立てられる仕組みの運用を始めています。

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